学校再開後の音楽の授業を考える⑤「鑑賞の学習活動の充実Ⅰ」

2 授業コラム

皆さんこんにちは!

これまでに、表現領域の、

「歌唱」と「器楽」の学習について、考えてみました。

こんな状況だから「鑑賞」の学習で

なんとかしのごう笑!

と思っている方は多いのではないでしょうか。

とは言っても、子供同士の交流もしにくいし、

なかなか難しいな~と感じている方も多いと思います。

今回はこの時期の鑑賞の学習を充実させるポイントについて、

考えてみたいと思います。

内容が盛りだくさんになるかと思うので、

いくつかに分けて投稿したいと考えています!

今回のテーマは「プラスαの1曲」です

学習活動の方針の確認

学習活動を考えるうえでの方針として、

以下の4点を挙げていました。

  1. 歌唱分野の学習を控える(※もしくは最大限の配慮と工夫により行う)
  2. 飛沫や唾液の発生を伴う、吹奏楽器(鍵盤ハーモニカ、リコーダー、篠笛等)による器楽分野の学習を控える(※もしくは最大限の配慮と工夫により行う)
  3. 同一の楽器・教材等を不特定多数の者が共用することは避ける
  4. 児童生徒の対面による交流や身体的な接触を避ける

「鑑賞」の学習を充実させようと考えると、

上記4について懸念されます。

聴き取ったことや、感じ取ったことを、

お互いに共有・共感することが、

鑑賞の学習の楽しさの一つでもあるかもしれません。

この状況下で、どのような工夫をすると、

鑑賞の学習を充実させることができるでしょうか。

今こそ音楽に浸る時間を!

まず、この状況を前向きに考えてみましょう!

今まで、鑑賞の学習を行うときは、

ただ聴かせるだけじゃ駄目だからと、

イメージや物語を考えさせてみたり、

プリントにやたら沢山の記述を行わせたり、

すぐに班での交流を促したりと、

授業の工夫を考えるがあまり、

1時間の授業の中で子供たちが、

しっかりと音楽を聴き味わう、音楽に浸る、

そんな時間を十分に取れていなかった、

という先生も多いのではありませんか?

自分もそうでした!

今のこの状況だからこそ、

子供たちには、しっかりと時間をとって、

音楽に浸らせてあげましょう!

いくつか、そういった視点での鑑賞曲のおすすめを紹介します!

教科書のお決まりの楽曲プラスαの1曲でせめる!

教科書にはいわゆるクラシックの名曲から、

我が国の伝統的な音楽、各地域の諸民族の音楽まで、

色々載っています。

授業で取り扱う時に、発展的に他の楽曲も加えて、

題材を組まれている先生も多いことでしょう。

いくつか自分のおすすめを紹介します。

実際に自分も授業で扱ったことのある楽曲なので、

題材をどんなふうに組んだら効果的か等、また別の記事にまとめたいとは思っているのですが、

さしあたってご質問がある方はお気軽にお問合せください!

資料やワークシートなども必要であればご提供できます。

交響曲第9番ニ短調「合唱付き」作品125 L.V.ベートーヴェン作曲

いわゆる「第九」ですね!

私は第五番をするときには、

必ずその前か後で第九を鑑賞するようにしています。

楽曲の魅力は言うまでもありませんが、

なんといっても「音楽の力」を感じる1曲ではないでしょうか。

シラーの詩に共感した人々の生活や社会、

ベートーヴェンの思いや願いのつまった旋律、

力強く圧倒的な合唱、

思わず聴き惚れてしまうそんな1曲です。

とは言っても4楽章全て演奏を聴いたら60分は越えますから、

いくつかの楽章、もしくは4楽章の抜粋がいいですかね。

「ベートーヴェンはどんな思いでこの曲をつくったのかな?」

そんな問いで作者に思いを馳せながら、

音楽のエネルギーを感じてもらいたい1曲ですね!

佐渡裕さんの演奏なんて最高ですね!笑 大好きです。

音楽の背景となる文化や歴史等との関わりに基づいて、

生活や社会における音楽の意味や役割について考えられる、

地球規模の作品だと思っています!

第九を取り入れた題材のデザインの質問はこちらから!

6声のリチェルカーレ:音楽の捧げもの J.S.バッハ作曲

バッハといえば「小フーガト短調」ですね。

フーガ」という形式、

多声音楽」の見事な調和、

簡単には書き尽くせないほど、バッハが音楽の世界に残したものは本当に偉大です。

小フーガト短調」と合わせて、

トッカータとフーガ ニ短調」を鑑賞される方も多いですね。

小フーガ」もそうですが、「トッカータとフーガ」も、

パイプオルガン以外の編曲、オーケストラ・吹奏楽等の演奏も魅力的ですね!

ほんとにかっこよくて壮大でゴージャスな演奏も多いかと思います!

是非いい演奏を探してみてください!

紹介している曲は「音楽の捧げもの」です。

楽曲の詳しいことは長くなるので、是非ご自身で調べてみてください。

少しだけ紹介すると、主題は「大王の主題」というもので、

バッハはある王様からこのハ短調の主題を与えられて、

即興で3声のフーガを演奏したらしいです。

即興で3声のフーガ!?すごいです、、。

その後曲集としてまとめられ王に献呈された「音楽の捧げもの

6声のフーガなんて、

小フーガト短調」と同様、

「主題が出てきたところで手を上げましょうゲーム」なども、

盛り上がるかもしれません。

バッハの楽曲は音楽の仕組みそのものが面白い作品が多いのですが、

テクスチュア」について苦手感のある子に、簡単に理解を促そうと思ったら、

2声のインヴェンション」等のような手におさまる規模の楽曲もおすすめです!

その他の拡大系や反行系のカノンなどの作品も、

紹介すると興味が広がる子も多いかもしれませんね。

バッハの偉大さに脱帽!という時間をつくれるかもしれません。

バッハのカノンやフーガを取り入れた題材のデザインの質問はこちらから!

歌劇「魔笛」 W.A.モーツァルト作曲

歌劇「トゥーランドット」より G.プッチーニ作曲

オペラといえば、ヴェルディの「アイーダ」が定番ですね!

オペラの魅力がたくさんつまった素晴らしい作品だと思います。

アイーダを深めていこうとするならば、

各声域と配役の関わりなどについて探っていくことが多いかと思いますが、

あまり取り上げられない(?)メゾ・ソプラノのアムネリスに視点を当てた鑑賞もおもしろいと思います。

アムネリスがアイーダに詰め寄る二重唱や、

ラダメス、アイーダに詮索する三重唱、

地下牢(お墓?)に祈りを捧げるアムネリスの表情など。

「アムネリスも、本当にラダメスを愛していたんだなぁ、、切ないなぁ」

といった表現の幅の広さも感じられるかもしれません。

オペラと歌舞伎などの舞台芸術を比較することもありますね。

ただ、オペラの魅力や特徴を考えるために、

たった一つのオペラを鑑賞するのみでは、

それが本当にオペラに共通する特徴なのだろうか?

といったように、音楽表現の共通性や固有性に迫れないこともあるかもしれません。

以前取り上げたように、「比較」が大事だからです。

是非、少しでもいいので、他のオペラも鑑賞させてみたいものです。

「どのオペラにしようかな?」

そう考えるときに子供たちが食いついて観るのが、

魔笛」や「トゥーランドット」のような、ストーリーが面白いものです!

オペラは愛憎劇を歌ったものが多いので、子供たちの実態に即して、

少し慎重に選曲をする必要があると思っています。

有名だからと言って安易に取り扱ったら、変なところで子供たちが盛り上がってしまった。

なんて経験もありませんか??

演出によっても、相当違いがあるので、映像も慎重に選びましょう。

魔笛」は小学校の教科書にも載っていますので、

あらためて鑑賞という生徒も多いと思います。

おとぎ話にもあるように、いわゆる冒険活劇(あってるかな?)ですね。

パ・パ・パ」のパパゲーノ、パパゲーナの二重唱に心躍らせたり、

夜の女王のアリア」の圧巻の歌声に聴き入って、聴いた後思わず真似したくなるなど、

惹きつけられる名曲が多いですね。

魔笛」は演出によって舞台の様子や衣装もかなり違うので、

それを比較して楽しむのも面白い作品です。

音楽の特徴と他の芸術との関わりについての理解を促せます。

すごく斬新な演出のものもあって表現のますよね。

↓以下は募金活動の一環としてアップ・共有されている、ロイヤルオペラハウスの「魔笛」から「夜の女王のアリア」の動画です。

トゥーランドット」も、ストーリーの時代設定や状況設定を含めた世界観が、

すごく想像を広げる作品ですね。

誰も寝てはならぬ」のカラフのアリアは言わずもがな、

トゥーランドットが最後の問いの答えを告げる圧巻のフィナーレ等、

見応え十分な作品ですね!

こちらも、カラフを愛してしまったリュウについてせまってみるのもおもしろいです。

トゥーランドットに、「愛」というものの素晴らしさ、尊さに気付かせてくれたのは、

もちろんリュウのおかげだと思います。

そのことを知っていると、フィナーレを観ても、

単純に「壮大なハッピーエンドだなぁ」とは感じない切なさ?のようなものも残る味わいがありますね。

オペラの作品を扱った題材のデザインの質問はこちらから!

今回は、

主にいくつかのクラシックと呼ばれる作品について

書いてみました。

「いい音楽に浸る幸せ」

先生方が一番知っていると思います。

是非子供たちにも、多様な素晴らしい音楽に、

触れさせてあげましょう。

人間関係と同じで、

知る」という段階が「認める」段階になるためには、

関わる」ということが必要です。

これは音楽科の目標でもありますね!

次回も他の楽曲を取り入れた鑑賞の学習や、

鑑賞の学習を充実させるための工夫について、

考えていきたいと思います!

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