開催レポート「音楽科授業工房ワークショップ「九大・芸工・音響設計コース 探検!」

1 お知らせ

6月24日(土)九州大学大橋キャンパス音響特殊実験棟にて、久しぶりの対面でのワークショップを開催いたしました。

今回は九州大学大学院芸術工学研究院の先生方にもご協力をいただき、世界的にも価値ある施設 九州大学芸術工学 音響設計コースを一緒に探検しながら、「聴くこと」や「音響」について学ぶワークショップを行いました。

大橋キャンパスは西鉄大橋駅から徒歩5分ほどの場所にあります。とてもアクセスが良いですね。

はじめに集合したこの会場が、すでに「スタジオ」ということで、インテリアの壁材、形状を拝見するだけで、大変興味をそそられる感じがしました。


最初は山内准教授から「音の基礎知識」について講話をいただきました。
「音ってそもそも何だろう?どう広がってどう伝わるの?」
「大きさと強さってどう使い分けている?」
「Hzってよく言ってるけど、詳しくは説明できなくて…」
そんな素朴な疑問に明確にお答えをくださったお話に、これまで特に意識していなかった言葉について、あらためて整理するきっかけともなった時間でした。

講話の中では、河原准教授にもご協力いただき、「聴能形成」の試行を体験させていただきました。dB(デシベル)やHz(ヘルツ)の違いを聴き取るのは、さすがに音楽科の先生方とても楽しそうでかつ燃えていました。(笑)

また、このスタジオは様々なホールの響きを人工的に再合成できる仕組みを搭載していて、実在するホールの響きをその場で体感できたことは、大変な驚きと感動でした!

続いて、施設の見学&体験を行わせていただきました。
ここでは、残響室(音の反射が凄くて大変響く部屋)、無響室(全く響かない部屋)、そしてスタジオ横の調整室(イメージはレコーディングスタジオ)の3つを回りましたが、驚きの連続でした!
やはり、「音」そして「響き」というものと空間性との関係は、実際に体感してみないと分からないものですね。

最後に、西田准教授による「音響設計コースにおける音楽教育」についての講話と、ピアニストの西岡怜那さんによるプリペアードピアノのレクチャーとパフォーマンスをいただきました。

芸術工学部の音響設計コースでは、入学試験にピアノ等の実技試験を課してはいないのですが、そのコースの目的から、ピアノ演奏や音楽理論教育を行っているとのことでした。音響設計者になるにあたり、演奏家の立場を経験することを大切にしているということでした。

プリペアードピアノについては、実際に生で鑑賞するのは初めてという先生方も多かったようで、皆さん興味津々でした。ピアノに設置された様々な素材を間近で観させていただき、その鍵盤を弾かせていただくことで、音色や音高の変化したおもしろさに触れることができました。

今回は、世界に唯一の施設である九州大学大橋キャンパス音響特殊実験棟をまるごと体験させていただく貴重な機会を頂き本当にありがとうございました。
九州大学大学院芸術工学研究院音響設計部門
 准教授 博士 河原 一彦 様
 准教授 博士 山内 勝也 様
 准教授 博士 西田 紘子 様
ピアニスト大学院芸術工学府博士後期課程
 西岡 怜那 様
御協力いただきまして、誠に感謝申し上げます。

有難いことに、今回はダイジェスト版とも言うべき詰め詰めの内容でもありましたので、次回もう少し内容を掘り下げたワークショップを行うのも良いですね、とお言葉をいただいています。その際は、また告知させていただきますので、どうぞご参加いただけると幸いです。

結びとして、参加いただいた先生方のアンケートから、いくつか抜粋させていただきます。お忙しい中、御参加いただいた先生方、本当にありがとうございました。

<アンケートから>
・無響室や残響室での体験は想像以上で感動的でした。百聞は一見にしかずという感じです。プリペアードピアノや図形楽譜のような楽譜を演奏するのもとても面白かったです。音の響きという点から何か授業に活かせるのではないかと思います。つむらでの話もとても楽しかったです。幅広い芸術に触れ感性を磨いてあることは刺激になりました。講師の先生方とももっと話をしたかったなと思います。素敵な企画をありがとうございました。(小学校教員)

・音の強さや大きさについて、明確な使い分けがわかったことはよかったです。授業の中で、響きを感じよう、や響かせようなどという言葉がよく出てきますが、響くとはどういうことなのか、よくわかっていなかったのではとこれまでの自身の実践を振り返ってみて感じました。今回の経験を子どもたちにたくさん話してみたいと思います。(中学校音楽科教員)

・プリペアードピアノが印象に残りました。今まで自分が知っていた知識よりさらに深いものを学べたと思います。また、施設の見学を通して、音や響きについて考えるいい機会になりました。なかなか見学できない場所なので、この研修はとてもありがたかったです。(小学校教員)

・いつも考えている音楽の視点とは違った見方からのお話はとても勉強になりました。音の大きさと強さが明確に分けられることや、騒音の考え方など、なるほどと感じることが多くありました。私は特に、残響についてが興味深かったです。リバーブ、ディレイの話があったときはワクワクしてしまいました。様々なホールの残響の模擬体験もとても楽しかったです。一つ一つが興味深く、新鮮な気持ちで参加できた一日でした。もっと一つ一つを深く学びたいと思ったくらいです。本当にありがとうございました。(教育行政職員)

・私は響きを抽象的な感覚や言葉で表すことが多いですが、科学的な視点で音を捉えると納得感をもって響きを感じられたように思います。また、残響の消え入る音を敏感に聴くことの価値を再確認したように思います。聴こえ方の話や環境音の話などもっと沢山お話をお聞きしたかったなぁと思いました。次回、また沢山お話を聞けたらありがたいなと思います。キャノンケーブルの正しい巻き方を教えていただきありがとうございました。(中学校音楽科教員)

・今回はワークショップを開催していただき、ありがとうございました。普段何気なく聞いている音について、物理的な視点で見つめたり、人がどのように音を聴き取っているのかについて考えたりすることで、「音」や「音楽」への捉え方が広がりました。また、無響室や残教室、音響のスタジオを見学させていただき、響きをデザインすることの面白さを味わうことができました。授業で扱っている音や音楽を、子どもたちがどのように受け取っているのか、意識しながら授業を進めていこうと思いました。(中学校音楽科教員)

・今回は滅多に見ることのできない施設を楽しみにしておりました。スタジオでは様々なホールが再現できることに驚きました。この空間がいつか学校の音楽室などで再現できる時が来ると、音楽の授業もまた違うアプローチが考えられると感じました。良い機会をいただき、ありがとうございました。(一般)

・音響学の専門家のお話を伺うのは久しぶりでした。科学的な視点での「音/音響」の把握の仕方や操作の仕方について、改めて確認できたのがとても良かったです。そして、私たちが現代の日常生活の中で聴いている音がいかに「生音」ではないか (まぁ、どこまでを生音と考えるのか? という問題もありますが)、現代社会の環境や現代社会に普及している道具が、そこにある自然音や音の本来の姿をどれだけシャットアウトしたり変容させたりしているか、また、特に自分の場合は、音や音楽の聴こえ方を通じてかなり空間や環境把握をしている自覚があるので、人間が世界(周囲環境)を把握するのにいかに音が重要であるか、様々な地域・時代・ジャンルの音楽(特に私の研究専門分野である非西欧芸術音楽系の音楽文化)の多くが本来閉ざされた空間ではなく開かれた空間で鳴る音楽であることへの留意、さらに、人間が音響のコントロールに対して抱いている欲望の計り知れなさ(笑)、などについて思いを巡らしつつ、人間にとって「気持ちの良い/快い音の聴こえ方」とは一体どういうことなのだろうのか? 人間にとって本当に「幸せな音・音響」とは何なのか? 実は、もう少し、講師の先生方と深くお話ししてみたかったです (「つむら」に行かれなくて残念でした)。もしかして、学校で児童生徒に本当に「音楽教育」として考えさえ伝えなければいけないことは、そこなのではないかと、私は思っています。音響を操作する「技術」や「音響学」という研究分野が、人の、現実の(生の/非人工的な)音や音世界の認識の仕方や感じ方の再考も促す役割があるのではないか、というところを、私自身は改めて考えました。講師の先生方、企画の先生方、ありがとうございました。(大学教員)

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