コラム「音楽的である」こと

2 授業コラム

ヤンキーっぽい音楽?

本題に入る前に一つのバンドを紹介させてください。

ILUSSION FORCE というメタルバンドがいます。ご存じですか?

もしあまり知らない方はよかったらお聴きください。

イリュージョン・フォースは多国籍MELODIC SPEED POWER METAL BANDです。(笑)
おもしろいのが、
・日本、韓国、アメリカの3か国籍のメンバーで構成されている
・四郎丸裕也さん、四郎丸丈二さんの実の兄弟によるツインギター
・韓国人の実力派驚異的ハイトーンボーカリストJinn
・バークリー音大卒のアメリカ人ベーシストのOllie
・ドラムにサポートメンバーとして国内外を駆け巡る日本人ドラマーGensuiが加わっている。(←すごいです!)などです。

ILUSSION FORCE(Twitter画像より)

ところで「メタル」っていうとどんなイメージでしょうか?


悪魔的、狂気的?(すみません)メイクがすごい?
激し過ぎてよく意味がわからなくて近寄りがたい?(すみません)

もしそんなイメージをお持ちの方(私ですすみません)は是非聴いてみてください。こんな爽やかなメタルがあったんだ!という衝撃です。


Jinnさんの圧巻とも言えるハイトーンボイスや、各メンバーの超絶的な技巧がマジすごいんですけど、そのメロディやコード進行がなんとも言えない爽やかな感じというか、90年代ポップスのような懐かしさというか、ポジティブなぽかぽかしたパワーを感じるんです。


疾走感溢れる楽曲から、重厚かつ壮大なナンバー、優しく包み込むあたたかなバラードまで非常にバラエティに富んでます!
まさに多国籍MELODIC SPEED POWER METAL BANDなんです!

更には、このバンド箏や雅楽などの音楽も曲中に取り扱っており、伝統音楽との融合という点から、授業において、伝統音楽の可変性という視点についても促すことのできる貴重なバンドです!

ここからが本題です。

そんなILLUSION FORCEを家で聴いていた時のことです。
小学校2年生のうちの子が、
「お父さん、なんでそんなヤンキーみたいな曲聴いてるの?」
って聞いてきたんです。思わずこう返しました。
「えっ?なんでヤンキーっぽいと思ったの?」
「なんか、激しい?やん」

この子はきっと、

” ヤンキーとは激しいものだ “
” 聴こえてきた音楽は「激しい」と感じた “
” ああ、これはヤンキーみたいな曲だ “

という思考をしているのだろうと考えました。
「音楽のどこからそう思ったの?」
そこまで聞き始めたら音楽の先生みたいで、めんどくさいやつだと思われそうだったので尋ねはしませんでしたが。
子供が「音楽的な」特徴を自分の経験とつなげて捉えていた、とても印象的な出来事でした。

こっちのほうが音楽的!


少し前のことです。小学校の音楽づくりの授業におじゃました時のことです。
PCを使って旋律の創作をしていました。
初めてPCを使ってしかも、音楽をつくるなんていう経験に、子供たちは夢中になっていました。

授業としては、ハ長調で終わった感じをつくろう、といったねらいの音楽づくりだったのですが、子供たちは、、

「すご~い!」
PCを使うと何でも簡単に操作できるため、沢山の音符を画面一杯に散りばめ、沢山の ♭ や ♯ で彩ります。
再生された音楽を聴いて目を開いて驚き、そして沢山の笑顔が溢れます。

♭ や ♯ が一杯ついた複雑そうな楽譜が「なんかかっこいい」という雰囲気がありました。

その後、「終わった感じ」にしようねと、子供たちは子供たちなりの「終わった感じ」をつくろうとしています。
ある子が先生をじーっと見つめています。
どうやら困っている様子です。画面を見るとそれはそれは凄い旋律が踊っています。
「先生、どうしたらいいかわかりません」
「ちょっと、音を動かしてもいい?」
先生がさっさと ♭ や ♯ を取り除き、ハ長調のそれはそれはシンプルな旋律をつくりました。

子供はどんな反応するかなーと少し心配していたところ、、

「すご~い!!」

周りで聴いていた子も一緒にすごい歓声が上がりました!

ソナチネを構成する分子のようなその旋律に子供たちが歓声を上げたことに私は驚きました。

自分が作った旋律を変えられてしまって嫌だと思うと予想していたからです。

「こっちのほうが確かに音楽的だ」子供なりにそう感じた瞬間だった。

大変シンプルな仕組みの中に「音楽的な見方・考え方」を働かせるきっかけがあった。

これもすごく印象的な出来事でした。

これはスプーンやフォークとは違う!

小学校の低学年の題材で「お気に入りの音をみつけよう!」みたいな題材があります。

中学校の先生からすると驚かれる方ももしかしたらいるかもしれませんが、低学年の音楽づくりではたった「1音」で行う音楽づくりをします。

自分の選んだ楽器を1音だけ鳴らして、お気に入りの音を探します。

ちなみに、どんな鳴らし方(奏法)をしたら、どんな「音色」になるか、それは器楽における知識として資質・能力としては整理されています。ここでは、音楽づくりとして「即興的に表現する活動において音楽づくりの発想を得る」ということをしているということです。

ある小学校の授業風景を観させていただいたときのことです。

4つくらいの楽器から1つを選んで、その楽器で1音鳴らしてお気に入りの音をつくります。

子供ですから色々な鳴らし方をしたり、当然「1音」という捉えを超えてしまっているような演奏もあります。

「どんなところがお気に入りなの?」

「音がきれいだから」

ほとんどの子はそう答えます。先生は「音楽的な見方・考え方」を働かせさせようと、何とかそこからその根拠を掘り下げようと問い返します。

「どんなふうにきれいなの?〇〇みたいだとかある?」

子供は困ってしまい、固まってしまいました。

だって1年生ですもん、たった1音の音から、そう言葉巧みにそのお気に入り具合を説明するのは難しいですよね。

「音がきれいだから」

それでいいと思いました。

例えばトライアングル。スプーンやフォークなど、子供たちがいつも触り馴染んでいる金属のものと比べるとどうでしょうか。

スプーンやフォークでも叩いたらいい音が出るかもしれません。

でもやっぱり子供たちはトライアングルを鳴らした時に「これはスプーンやフォークとは違う!」と感じるのではないでしょうか。

「こんな素敵な音が出るんだから大切に扱わなくちゃ」

「もっと響く音がつくれるかも」

「鳴らし方を変えたらまた違ったいい感じがした」

そんな感じ方をした子供たちはきっと楽器の奏法を身に付けたいと思い、扱い方を気を付け、耳を澄ませようとするのではないでしょうか。

単なる「音」じゃない、「音楽的な音」だ。子供たちに感じてもらいたいですね。

音楽的な見方・考え方って

ここまでに述べた3つの事例は、どれも子供たちが子供たちなりの「音楽的」を感じている例でした。

小学校段階の子供たちには、詳しく言語化を促すのはとても難しいことで、そこにこだわり過ぎる必要は全くないと思います。

逆に子供たちなりのこういった「音楽的だ!」という種を一緒に見つけ、芽をしっかり育むことが大切であると考えます。

小学校、中学校段階では様々な音楽と出会います。

いわゆるクラシックから、我が国や郷土の伝統音楽、アジア・世界の諸地域の民族音楽などなど、様々ありますね。

「これはこういう音楽だ」

音楽科の先生なら、きっと自分の知識や経験からそれら様々な音楽の特徴を整理して捉えていると思います。

それを何とか伝えなくては!なんて思わなくていいと思います。

そういった様々な音楽と子供が向き合った時に「音楽的だ」と感じてもらえるところがあればそれでいいと思います。

先生方も初めてこの音楽に触れるように、ワクワク、ドキドキしながらその「音楽的」を子供と一緒に味わい楽しんでほしいと思います。

あまり難しく考えずに、

「これは音楽だ」「これは音楽的だ」にするもの、それが「音楽的な見方・考え方」なのかもしれません。

さらには、「生活や社会の中の音や音楽、音楽文化と豊かに関わる」ということは、こういった「音楽的」な実感を子供たちにもたせることなのかもしれないな、そう思うこの頃です。

 

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